昼の月
episode.07 (ページ4/6)

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初めてできた恋人は名無子がまだ根に入る前の下忍の頃、同じ班にいた男らしく積極的な人だった。

「大好きだ、名無子」

そう言って何度も抱きしめてくれた。
すごく嬉しかった。
愛し合ってるんだって、そう思えた。
アカデミー時代のいてもいなくても関係なかった自分を、そんな自分の日々を、どこかへ押しやり見えなくするように、名無子は彼に夢中になった。
でも、しばらくして名無子の目に映る彼の人格も、彼との関係も、ただの表面的なものだったとわかる。
それは一緒に当たった任務の時のことだった。
名無子と彼のふたりは運悪く敵の捕獲トラップにかかり、とらえられてしまった。
拘束の身で敵のリーダーらしき男の前に引きずり出され、「殺せ」と簡潔に告げられたその言葉に、名無子の彼は懸命に命乞いを始めた。

「た、助けてくれッ、まだ死にたくないッ!! 頼むから俺だけでも見逃してくれよッ!!」

俺だけでも?

彼は保身のために名無子を売る言葉を吐いていた。



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