昼の月
episode.05 (ページ5/5)

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この人は本当に何を言っているんだろう。
私がケガをしたところで、

「そんなのアナタには関係ない」

名無子が静かに答えると、サイはその黒い澄んだ瞳で真っ直ぐ名無子を見つめた。

「関係あるよ。キミは僕の仲間だから。仲間のキミが傷つくのは僕は嫌だ」
「仲間、ね……」

仲間という言葉をこんなにも真剣に告げる根の忍など他に類を見ず、名無子はサイの言った単語をオウム返しに呟いた。
呟いたところで別段どうということの無い響きのそれをどうしてこの人はこうも大事そうに言うのだろう。
そういえば木の葉病院の医療忍者も同じことを言っていたか。
名無子は目を伏せ、その医療忍者を脳裏に思い出した。
あの女も、今、目の前にいるこの男と同様、仲間仲間と口やかましく言っていた。
もしかして仲間同士信頼しあって力を合わせて任務に当たれとか言いたいのだろうか。
仲間だとか信頼だとか、それこそ愛とか友情とか、そんなものが一体なんになる。
そんなものがなくたって任務は遂行できる、それは明白な事実であって、そういうものを排除したうえで任務をこなしている根の忍達はまぎれもなくその生き証人だ。
曖昧で吹けば飛ぶ幻影みたいな概念に頼るよりも、理性で判断した効率的な選択肢を選ぶことのほうがはるかに賢い手段と言えるだろう。
名無子は顔をあげ、何の意志も感じさせない瞳でサイを見た。

「だったらなおさら私には関係ないわ」





to be continued.
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