昼の月
episode.05 (ページ4/5)

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なのに、そうじゃない、とはどういうことだろう。
その疑問に答えるわけでもなく、サイは続けて名無子に質問を浴びせた。

「自分から相手のクナイを受けに行っただろう? それはどうして?」

名無子は少しばかり目を瞠った。

この人、私がわざと攻撃を受けていたってことに一応は気づいてたのか。

そのことは正直名無子にとって意外だった。
根の人間は他者に対して無関心だ。
ケガをしようが、死んでしまおうが、任務を遂行できればそんなことはどうでもいい。
そういう忍で成り立つ組織の中にこんなふうに人の行動心理を見届けている人材がいるなんて実に稀なケースだろう。
けれど、だからといって自分がわざと攻撃を受けに行っていた理由を話す理屈にはならない。
そんな理由を言ったところで相手に理解できるわけもなく、それ以上にその理由を言う意志が名無子にははなからなかった。
拒絶と言う名の沈黙を行使し、名無子は黙り込んだまま自分の網膜に映り込むサイの姿を眺める。
すると、サイはやっぱり根に所属する忍としては実にらしくない言葉を口にした。

「敵との戦いで僕を刺すのは構わない。でも、キミ自身が自ら望んで傷を受けに行くことはもうしないでほしい」

名無子の瞳孔がわずかに揺れた。



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