真昼の月
episode.05 (ページ3/5)
止血を……と思ったとき、
「名無子」
名前を鋭く呼ばれた。
声のした方角へ名無子がゆらりと目を向ける。
その目にサイの真剣なまなざしが映った。
あぁ、この人か。
戦いの間、すっかりその存在を忘れていた。
そういえばツーマンセルだったな、と昨日の昼食メニューでも思い出すような興味の無さで名無子はサイを見返した。
サイはその顔に、この人には不似合いな微かな険しさを湛えている。
「腕のケガ……」
サイの呟きに名無子が自分の左腕に視線を投げた。
「たいしたことないわ。今、止血をす……」
「そうじゃない」
そうじゃない?
言われた言葉の意味がわからず、名無子は首をわずかに捻った。
会話の流れからしてサイが訊ねたのはケガのことに違いないはずだ。
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