昼の月
episode.04 (ページ4/6)

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その間も男は名無子を容赦なく攻め立てる。
男はガタイのいい自分と華奢な名無子の力差を計算したのだろう、体術で力任せに押していた。
名無子は相手の繰り出す膝蹴りを両手でブロックし、続けて打ちこまれた拳の連打も掌で受け止め、しっかりガードを決める。
が、やはり力負けして体が後ろに傾いだ。
それを好機と男が勢いよく踏み込み、蹴りを伸ばす。
左足を軸に遠心力まで加えこんだ男の蹴りはさすがに体勢を崩したまま受け止めるにはきつく、名無子はすばやく後転飛びすると着地点に片手をついて体をより後方へと押しやった。
名無子の体がふわりと浮いて崖の縁の赤土を大きく飛び越えていく。
下は激流逆巻く川底が横たわり、名無子の体は当然その中へ落下するかに見えた。
が、次の瞬間、名無子の足は崖壁に生えている木の枝に身軽に降り立った。
その様子に男が、チィッと舌打ちをする。
名無子は間髪いれず男に攻めかかろうと足元の枝を蹴りつけた。
すると、

メキッ……。

根の張りが弱かったのか、それとももともと崖壁の土自体、堆積がもろかったのだろうか、名無子が足を降ろした樹木は蹴られた衝撃に耐えきれずその根ごと崖壁から崩れ落ち、名無子もろとも崖下へと落下した。



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