昼の月
episode.04 (ページ2/6)

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「名無子、待たせてごめん」

突然声をかけられ、名無子は空から街中へと視線を落とした。
大通りの喧騒を抜けて現れたサイの姿が目に映る。
無言で迎えた名無子の前まで来ると、サイはふっと上空へ目をあげた。
名無子の見ていたものを知ろうとするかのように視線を頭上に飛ばしたサイは、その目を左右に彷徨わせた後、名無子が何も言っていないにもかかわらず、スッと真白く浮かぶ月の上に自然と停止し、名無子の見ていたものを少しの迷いもなく理解してみせた。
そんなサイにちょっとだけ自分の無感情が揺れた。

「早く次のターゲットを探さない? ただでさえ時間をロスしたのだし」

見たくないものから目をそらすように名無子は自分の揺れたモノから任務へと意識を向けた。
凛とした名無子の声に反応して、サイの黒い瞳が空から名無子へと落ちてくる。

「そうだね、ごめん。行くとしようか」

サイが素直に頷いて、大門を颯爽と走り出た。
その後ろを名無子が追う。
追いかけながら、前方を走るサイの姿に名無子は目を細めた。

アナタは私が何を見ていたかなんて理解しなくていい。
そんなことより任務を遂行することだけ考えてくれればいい。
私たちはそのために一緒にいるだけで、それ以上でもそれ以下でもないのだから。
根に属するということはそういうことなのだから。





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