昼の月
episode.04 (ページ1/6)

 bookmark?


病院を後にした名無子は木の葉に戻ったついでに任務で減った忍具を買い足し、大門へと向かった。
そこにはまだサイの姿は見当たらない。
きっとまだあの医療忍者に治療されているのだろう。
一緒に任務に就いているサイの怪我が回復する以上、むやみに置いていくわけにもいかず、名無子は約束通りサイを待つため大門の脇に立ち、頭上を見上げた。
名無子の上には自分の存在が居たたまれなくなるほどに鮮やかな青空が広がっている。
流れゆく白い雲、刻々と微かに移り変わる空の色味、一言に青空と言っても、それは一時たりとも同じ表情では留まらない。
どんどんその表情を変えゆく空はひどく無常なくせに、それでも何か雄大で絶対的な存在に感じるから不思議だ。
そこから剥がれたくないなんて気にさせられる。
本当に変な感覚だ。
そして、その感覚を具現化しているような物体が目に映る。
それは真昼の月、キラキラと生の喜びを謳歌する太陽に並び、この空に浮かぶ真白い月だ。
昼間の太陽や夜の月とは打って変わって真昼の月は何ものをも照らし出すことがない、あってもなくてもいいような存在。
この世にいてもいなくてもどうでもいい、実に価値のない自分と同じような存在だ。
そんな白々とした月が明るく輝く空から剥がれおちまいと懸命にそこにしがみついている。
名無子はその月を吸い込まれるように見つめた。



(ページ1/6)
-16-
|
 back
select page/92

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -