昼の月
episode.22 (ページ2/2)

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肩で呼吸を見せ始めたサイの姿を敵のリーダーであるキリは脇息に肘をつき、余裕の表情で眺めおろした。
このまま格下相手に戦っていてはいつまで経ってもあの男のそばには近づけない。
サイは背後から襲いかかってきた者の剣をはじき返すと身を沈め、足元を払って床に倒れ込んだところを、肺の上から刺し貫く。
それから、ふわりと体を浮かせると、男たちの肩や頭をふみ、自分の周囲に立ちはだかる人の波を一気に飛び越えた。
タタッと広間の中央を駆け抜けて、脇息にゆったりともたれ微動だにしないキリへと直進する。
右手に握った刀の柄にさらに力を込めてブンッと振りあげる。
右上から袈裟切りにしようとしたサイがその左右からキリのまわりを離れなかった警護の連中に刃を突き立てられた。
ズグッと肉に沈む嫌な音を右のわき腹と左の脇下から発し、サイの体が膝から崩れ落ちていく。

「たわいない」

キリが皮肉気な笑みを浮かべて見下した瞬間、サイの肢体がグズッと黒く液化し始めたかと思うとポフンと大きな煙をあげた。

「――」

目を瞠ったキリの前からサイの姿はあとかたもなく消え去っていて、その様子にキリはギラリと辺りに目を走らせる。
即座にサイの姿がどこにもないことを理解し、キリが猛然と立ちあがった。

「女だ! アイツの本当の目的は女だ! お前ら、塔に向かえ!! アイツはあの女を助けに行ったんだ!!」





to be continued.
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