昼の月
episode.21 (ページ1/1)

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幽閉された部屋の中、高窓の光を見上げていた名無子は不意に扉を叩く音に意識を戻された。
声を出すどころか視線さえ向けずに壁にもたれていたのは心も体も疲弊して瞳を移行するのも面倒なためだ。
すると、
ガチャリ。
重たい音を立てて鉄の扉が開かれ、続けて男の声がした。

「さぁて、次の舞台の始まりだ」

またどこかにでも連れ出され拷問の続きを受けるのか。
根と言う暗部育成機関所属である以上、拷問に対する特訓は受けているし、薬剤耐性だって叩きこまれているのだが、それでもやはり体はきついし、頭だってかなり朦朧としている。
耐えられないとかそういうものとは違うものの、拷問に付き合わされるのがなんともダルイ、名無子としてはそういう認識だった。
もっともこの状態では抗うことなど到底できるはずもなく、名無子は構えることさえせずにどこへなりとも連れて行けと諦観していた。
その耳に意外な一言が飛び込んでくる。

「今度はここがステージだ、せいぜい楽しめよ」

どういうことだと考え出した脳に男の声とは違ったノイズが伝わる。
それは人為的な音とはまったく異なる低い声、獣の喉が鳴らす唸り声だ。
名無子の蒼い瞳が高窓から初めて扉へと向けられた。
その目に映る三匹の野犬が男の手によってリードをはずされて、

「よし、行け!」

嬉々としてけしかけられた。





to be continued.
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