昼の月
episode.20 (ページ1/2)

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最初に侵入者の姿を確認したのはアジト屋上で警務にあたっていた男のひとりだった。
通常まず入りこまれる恐れのない上空の穴からの潜入に男は見間違いかと目をこすり、そうではないと知れると慌てて声をあげた。

「侵入者がいるぞッ!! 上の穴からだ!!」

驚きに上ずる声が周囲の注意を一気に頭上の穴へと引きつける。
そこからタッと飛び降りたのは自分たちが先ほど逃がした敵、黒髪の青年サイだった。
サイが屋上の床の上に軽々と着地し、周りの男どもの攻撃を受ける前に走り出す。
そして、屋上の端から壁伝いに駆け下りて二階部分の真ん中にあたる窓へ体当たりとともに飛びこんだ。
ガシャーン!! と窓ガラスの砕ける音が反響する中、室内に身を躍らせたサイは体を丸めて受け身の体勢を作る。
部屋の堅い石床にころりと転がったあと、間髪いれずにサイは立ち上がり、何の迷いもない黒い瞳を真っ直ぐに伸ばす。
その視線が睨みつけた先には、ここの連中の頭目、ビンゴブック標的の男キリがいた。
広い中央部屋らしき広間の奥に一段高くなった場所があり、そこでキリは胡坐をかいて座っている。
キリは脇息に肘をのせたままサイを見つめ、目を細めた。

「ほぅ〜。お前か」



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