昼の月
episode.19 (ページ3/4)

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アジトへの正面口と思われる入口から山をいくらかあがった中腹に井戸のような穴があった。
常緑樹が立ち並ぶ森の中に小さく口を開き、その周りを囲む石の井筒にはツタ類が絡みついている。
高さ40〜50cm程度の井筒の横には一人の男が地べたに座り込んで石の壁をぐったりと抱え、もたれかかっていた。
恰好からして山賊じみた男はおそらく例のターゲットであるキリの部下なのだろう、この穴を警備役として預かっているらしく、そのことからもここがアジトへの裏口に当たるものだと簡単に知れた。
サイは先ほど蝙蝠が出口として使ったこの穴を真上にはりだしている木の枝から見下ろしていた。
下にいる男はサイの気配に全く気付いた様子もなく、だらしない表情と姿勢で、あふっと大きく欠伸をしている。
こんな辺鄙な入口を見つけて侵入しようとする者などまずいないに違いない。
警護する身としては油断の嵐になるのも仕方のない話だが、今日に限ってはそれが命取りだった。
樹上から颯爽と下りてきたサイの峰打ちで呆気なく男は意識を途絶えさせた。
障害を楽に排除したサイは岩作りの囲いに手をかけ、さっそく穴の中を覗きこむ。
井戸を彷彿とさせる作りの穴は内部もやはり井戸のように真っ暗な世界が底なしの深さで延々と下へ伸びている。
人一人がようやく通れるほどの穴の片側には縄梯子がかけられており、それがずっと下方へと続いているのが見えた。
きっとこの闇を降り切った場所が連中のアジトなのだろう。
サイは迷わずひらりと中へ身を躍らせ、その縄梯子を手にどんどんと降りて行った。






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