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episode.05 (ページ1/5)

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さすがに日向家宗家に比べてしまえば劣るものの、それでもうちの実家より充分長い廊下をフミさんの案内に従ってトボトボと歩いていく。
どうやらこれから私の使う部屋へと向かっているらしいが、そんなことより今の私は絶望感でいっぱいだ。
実家にも帰れず、任務にも出られず、日向家から外へ出る機会をすべて失った私は一体どうやって逃げ出せばいいというんだろう。

どうにか隙を見つけなければ……。

バックレる気満々だった私はろくな解決手段も思いつかぬまま、ガンガンと痛みばかり増す頭に口中ひそかに呻き声をあげた。
目の前ではチョコチョコと小さな歩幅を懸命に動かし、フミさんが歩いている。
その後ろ姿を見つめながら、蹴りでも入れてくれようか、なんて本気とも冗談ともつかぬ……いや、ほぼ本気で埋め尽くされた確固たる心構えを胸に顔をしかめていると、前を見たままフミさんが不意に呟いた。

「お母様、お喜びでしたよ」

その言葉に、あぁと頷く。
フミさんはきっと実家に私の荷物を要請しに行った時のことを言っているのだろう。
そういえば、ここを出られない絶望感にすっかり忘れていたが、私のこんな突然の婚約話を聞かされたうちの親どもは一体どんな反応を示したのか。

お喜びとは言っても、事情を聞いてすぐはさすがに両親も心配したんじゃないかなぁ……。

なにしろ娘の婚約だ、驚きのあまり取り乱したりということも充分あり得る話だ。
私も両親の様子は気になって、肩越しに実家の有様を話し始めたフミさんに大人しく拝聴の姿勢でつき従った。





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