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episode.25 (ページ1/4)

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寺院の神事の警護も今日で最終日となった。
昼の休憩をはさんで午後の警護が終われば、これで任務完了だ。
俺は束の間の昼休憩で昼食を食べ終えると、残りわずかとなった任務に安心したせいか、ひとり、門前町へと足を運ぶ気になった。
神事の期間中というだけあって、辿りついた門前町はたいそうな人数で混みあっている。
祈祷を捧げる僧侶たちととも自分たちもお参りしたいということなのだろう。
信心深い信仰者から一般の観光客までさまざまな人間の出入りが見られる。
門前町に並ぶ店のほうも、ここが稼ぎ時とばかりに賑わっていた。
土産物を売る店、食べ物を売る店、仏具を扱う店など、いろいろな商店が軒を連ね、たくさんのお客を集めようと活気づく。
その中で、漢方をはじめ、多種多様の薬剤を並べている店舗が目に入った。

薬屋か……。

店の看板を見上げた俺の頭に、昨日見た名無子の手が思い出される。
アカギレのひどい手。
そんな手でアイツは水仕事の多い家事をこなし、そして、昨日、日向家家訓の板をぶち壊した。
相変わらず気の抜けた顔で「お帰り」と俺を迎え、傷だらけの、アカギレだらけの手で、うちの家訓を粉々に打ち砕いていたんだ。

『新しく作ればいい。日向のしきたりは。これからネジがさ』

ね? と笑った名無子の姿に、俺は自分が閉じ込められていた檻のカギがカチャリとはずされた気がした。
ずっとずっと出られなかった日向家という重厚なハコからやっと出られ、俺は日向分家の子息だとか、白眼の天才児だとか、そんな重たい軋轢からも解放された気がしたんだ。



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