Break for
episode.17 (ページ8/9)
ムカつくけど、ほんとキレイな顔。
私はネジのそばに座りこみ、その顔をまざまざと眺める。
毛布の中で眠るネジは、いつも私に見せている怒り顔でもしかめっ面でもなく、彼が常にみんなに見せている怜悧な雰囲気さえも消失させて、ひどく安心に満ちた穏やかな空気に包まれていた。
こんなネジを私は一度も見たことがなくて、なぜかとっても引き込まれた。
いっつも隙がなくて、天才らしく、上忍らしく、日向を背負う人間らしく、毅然としてるネジ。
でもそれはひどくキツイことなんじゃないかと思う。
みんなの期待に縛られて、日向という家のしきたりに縛られて、その中でたいした愚痴も言わずに重い任務について、この人は必死にがんばってるんだろう――。
そんなこと、今まで考えもしなかったけど、今、ネジの、きっと彼本来の顔と思われる柔らかな表情を見ていると、私の中に彼の日頃の頑張りが、懸命さが見えてくるようで、そう思わずにはいられなかった。
がんばってるんだ、ネジ……。
いつの間にか無意識のうちに、私の手がネジの顔へと伸びていた。
そのことに気づいて、私はハッと手を引っ込めた。
な、なにしてんの、私ッ?!
暗がりの中、伸ばした右手を左手でしっかり握りしめ、明らかに赤面する。
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