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episode.12 (ページ3/4)

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「……例えば、俺に何か届けようとしてたとか?」
「坊ちゃまに、でございますか?」

疑わしそうなしわ顔で見られて内心、動揺この上ない俺は、それでもいつもの平静を装って言葉を続けた。

「あぁ、そうだ。俺のために忘れ物でも届けようとして……わかった、きっと財布だな。今日、俺は家に財布を忘れてしまったんだ。それに気づいた名無子が気を利かせて、俺に届けようと……」
「この家を出ようとした」
「あぁ、そういうことじゃないか?」

まだ合点がいかないと目元のしわを深めた……つまり目を眇めたらしいフミさんに、

「いや、絶対そういうことだ。まぁ、次、こういうことがあったら、俺に忘れ物でも届けるんじゃないかと思って聞いてやってくれ。じゃ、頼んだぞ、フミさん」

俺は口早に言いきってその場をあとにした。

まったくアイツときたら後先考えずに行動する……。

自室の入り口で、障子戸を後ろ手に立っていた俺は、机の前まで行き、ドカッと座って頬杖をついた。

脱走したい気持ちはわかるが、俺の恋人と言われるヤツがそんなことしたらおかしいだろうが。
恋人じゃないことがバレたらどうしてくれるんだ。



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