Break for
episode.10 (ページ3/3)
その様子にはさすがに普段からネジの怒りを買い慣れているこの私でもガタガタと震え、必死に弁明を試みた。
「いや、でもさ、あの、何、コレ、この着物! 和とパンクの融合?! みたいな感じでさ!! わびと叫びのコラボでしょ!! 新たなアートのロック魂が垣間見られるよ!!」
「見られるか、そんなものッ!!」
「じゃあ、聞こえ……」
「聞こえんッ!!」
私は慌てふためきながらもネジのパンクロック着物を手に取り、
「いやいやいや、ホント来月あたりクルから、コレ、絶対流行るって、マジで!!」
ネジの体に急いで着せる。
「あ、もう、ほら、ステキ!! そこら中の穴という穴からロックなキラメキがほとばしるね!! めちゃくちゃ似合う!!」
「似合ってたまるかッ!! コレを俺に着せるんじゃないーー!!」
いつもは鉄壁なネジの冷淡さも私の遠慮ない破損行為の前では儚くも無残に崩れ去り、夕焼けに沈む庭いっぱいに怒りに堪え切れなかったネジの叫びが響き渡る。
通常、人前で怒りをブチ撒けるなんてまずないネジをここまで見事に怒らせられるのも世界広しと言えど私くらいなものだろう。
って、それ、全然自慢できないんだけどッ!!
私は自分自身に突っ込みを入れながら、不機嫌、呆れ、上から目線、そして激怒という自分がネジから食らう日常茶飯事四点セットがどうやら恋人役を押し付けられている今も健在であるらしいことを実感する。
そうして、このアグレッシブな状況を手に、私の花嫁修業二日目はその長く憂鬱な一日にようやく幕を閉じようとしていた。
to be continued.
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