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episode.05 (ページ3/5)

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「あら、やだ、私ったら人様にこんなことお話ししちゃって! ごめんなさいね。それより、そうそう、花嫁でしたわね、花嫁! うちの娘が嫁入りだなんて……いざそうなると何をしたらいいのか、急には思いつかないものね、どうしましょう。でも、まずはアレかしら?! 結婚で必要なものと言ったらやっぱりアレ、なんといってもサムシング・フォーよね!!」

サムシング・フォーとは結婚式における慣習で、花嫁が四つの品、古いもの、新しいもの、借りたもの、青いものを結婚式で身につけていると幸せになれるという言い伝えだ。
そのことを瞳を煌めかせ自信満々にのたまう母親にフミは完全に呆気に取られた。
母親のほうはフミの様子などまったく意に介さず、これは名案とばかりにうんうん頷いている。

「花嫁たるものサムシング・フォーははずせないわ。サムシング・フォーさえ身につけていれば、たとえウェディングドレスがなくても幸せになれるはずよ!!」
「いえ、あの……」

フミに口出しの余地を与えず、名無子の母は今度は廊下の奥に向かって声高に呼ばわった。

「ちょっと、ねぇ、お父さん!! 名無子がネジくんの花嫁になるんですって!!」
「いえ、ですから、まだ花嫁になるかどうかは……」

玄関先で一人、必要以上に盛り上がっている母親にはフミの具申などもはや耳に届きやしない。
清々しいほどきれいにシカトをかまし、奥の部屋にいる名無子の父親との話に夢中になっている。
と言っても、奥の間から聞こえてくるのは――

『左京さん!!』
『急いでください、鶴山くん!!』

おもにテレビから漏れる人気刑事ドラマ『相方』の声だった。



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