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episode.05 (ページ2/5)

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ピンポーンと鳴り響くチャイムの音に「はぁーい」と声をあげて、その一軒家の玄関から一人の中年女性が姿を現した。
歳の頃四十半ば、おっとりとした雰囲気の優しげな女性は名無子の母親だ。
そして、その前に立つのはもちろん――青武フミ。
フミは名無子の母に慇懃に挨拶をした。

「はじめまして、わたくし、日向家にお仕えしております青武フミと申します。突然の訪問、お許しくださいませ。実はこの度、貴家のお嬢様名無子様が日向家分家御嫡男ネジ坊ちゃまの花嫁候補として、当家のしきたり等を学んでいただく運びとなりま……」

礼儀正しいフミの説明をキョトンと聞いていた母親が突然大きな声でその話をぶち切った。

「えぇ?! 名無子が?! 日向家のネジくんの花嫁候補?! えぇ?! そうなんですか?!」

すべて疑問形で大声をあげながら彼女は両手を頬にあて、わかりやすい驚きの表情でフミを見る。

「やだ、あの子、そんなこと一言も言わないから、私、全然知らなくて。まぁ、ホントに? もう私ったら母親なのに何もわかってなくてお恥ずかしいわ。でも、あのくらいの年頃の娘って扱いが大変でしょう? 困っちゃうんですよ、隠し事もいろいろあるみたいで聞きたいのはやまやまなんですけど、詮索すればしたで喧嘩になってしまったり。ただね、そういうちょっとした距離の蓄積がどんどん親子のきずなを崩壊させていくんじゃないかと、母親としては心配でたまらないんですけどねぇ」
「いえ、あの……」

マイペースさ炸裂に語る母親にフミが口をはさむ。
勝手に話して勝手にテンションを下げていた母親はフミの声にパッと意識を浮上させた。



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