Break for
episode.04 (ページ4/6)
「とにかく私、一度家に帰って荷物用意してくるわ。じゃないと着替えも何も持ってないしさ」
ついでにそのまま逃げ出してやるよ。
ざまぁみろ。
心の中でひそかにほくそ笑んでいると、
「それならばご心配ご無用」
「は?」
どういうわけかフミさんが自信満々に私の顔をしわに埋もれてその存在すら判別付かない眼球で見上げた。
そして、すぐさま近くにあったやけに見慣れた感じの代物を持ち上げ、私の前に掲げる。
「ほら、この通り、名無子さんの必要品はご実家から預かってきてございますので」
あ、あずかってきた?!
なんですとォォオーー?!
よく見てみれば確かに目の前のブツはふだん私が旅行なんかのときに使っている布製のボストンバック。
それをフミさんは意気揚々と見せつけて得意げに説明し始めた。
「わたくしの諜報網で名無子さんのご実家を即座にお調べし、行ってまいりました。お母様に事情を申し上げてこれら必要品を揃えていただいたのです。ですから、どうぞご安心を」
(ページ4/6)-24-
←|→ backselect page/141