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episode.32 (ページ2/4)
「ネジくんには、うちの娘が任務中に助けてもらったそうだね。父親の私からも礼を言うよ。どうもありがとう」
「そんなたいしたことでは……」
俺の返事を聞いて、彼女の父親はハハハと声を上げ、豪快に笑った。
俺に好感をもったのかもしれない。
どこか満足げな笑い方だった。
「話通り、礼儀正しいな、ネジくんは。さらに、その若さですでに上忍。忍としての才能も素晴らしいと聞いている。さすがは日向家の血を受け継ぐ者だ。娘の小糸(こいと)が惚れこむのもわかる」
「お、お父様!!」
赤面する小糸さんをよそに、お父上は満足げな笑みを見せ、言葉をつづけた。
「どうだろう、ネジくん。この子との縁談なんだが、真剣に考えてはくれないだろうか?」
そこで、俺は、「は?」と目を見開いた。
あまりに不躾な申し出に、何を言っているんだろうと思う。
俺には恋人がいると伝えてあるはずだ。
見合いに来ただけでも随分こちらが譲歩しているというのに、そのうえ、性懲りもせず縁談を進めようというのか。
俺は当然言ってしかるべき反論を試みる。
「あの、私には……」
「あぁ、わかっている」
お父上は軽く手をあげ、俺を制した。
「君の立場はわかっているよ。恋人がいるそうだね。その女性が最近、君の家で花嫁修業をはじめたことも知っている。だからこそ、うちも一度は見合い話をあきらめた」
「でしたら……」
「だがね、ネジくん」
俺の言葉を取り合わず、お父上は腕を組み、身を乗り出した。
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