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episode.31 (ページ2/4)

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昨日、俺との話の途中でふと見せた、名無子のやけに悲しげな瞳の色。
まるで大事なものでも失くし、傷ついたかのような表情は、一瞬見せただけとはいえ、俺の頭にこびりつき、決して離れてはくれなかった。
確かに顔は怒っていた。
なのに、眼だけは妙に切なそうで、名無子のそのギャップが俺の胸をことさら焦がした。

あんな眼を見たくはなかった。
あんな眼をさせたくはなかった。
でもアイツは、なんで、あんな眼をしたんだ?

怒る理由はわかる気がするが、瞳に浮かんだ表情の理由まではつかみきれない。
ただ、アイツが俺を見合いに行かせたくない理由を挙げるとすれば、自分の協力が無駄になったということと、他には、あと――。
弾きだした可能性論が俺の胸をドコッと叩き、血流の速さが一気に増した気がした。
底冷えしていた足先にまで血液が循環し、体全体がふわりと温かさに包まれる。
しかし、俺はその温かさを打ち消すようにあわてて首を振った。

馬鹿だな、俺は。
何を考えてるんだ。

そんなわけないだろうと、俺は口元に自分自身に向けた嘲笑を刻む。

そんなわけ、あるはずないんだ。
アイツが、俺が見合いに行くこと自体を嫌がったなんて。
そんな嫉妬の感情を、俺に抱くわけ……。



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