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episode.30 (ページ3/4)

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私は目の前の松の枝に両腕でしがみつき、なおかつ左足はつま先までキレイにピンと伸ばしたまま、枝の下方からそっと建物の様子をのぞき見た。
庭園を間に挟んだ向こう側には、大きく張り出た屋根の下に縁側廊下が平行にはしり、それに沿って和室がいくつも並んでいる。
廊下と和室の間を仕切るのは障子戸だ。
だが、全部が障子貼りなのではなく、下部ははめ込みガラスになっている雪見障子だった。
そのため室内からでも外が見えるようになっている。
来店客に庭の四季を楽しんでもらえるようにという、店側の心遣いを感じる造りだ。
部屋の中ではおそらく、いろんな会合や縁談が今まさに進行中、あるいはこれから進められるのだろう。
どこも雪見障子がきっちり閉められ、周りに漂う空気も静かで厳かだ。
そして、その中の一室にネジのお見合い相手もいるに違いなく、そう思うと私の左胸は妙な痛みに軋むようだった。
自然と右手が胸元を握り、顔が歪んだ。
と、そこへ、縁側廊下を店の案内係りに連れられてゆっくりと移動するふたつの人影を見つけた。
それはまぎれもなく、ヒアシ様と、

ネジッ!!

私は心の中で叫び声をあげていた。
しかし、すぐにハッと気を引き締める。
ふたりとも充分を通り越すほどにすご腕の忍なのだ。
こっちが気を抜いた瞬間、簡単に察知されて、ふたり一斉に見事なハモリ具合で「白眼ッ!!」と叫ぶこと間違いなし、続けて食らうはあの世にも恐ろしいガン見ビィーーーム。

いかん、いかん、こんなとこで死ぬわけには……!!

私はこれでもかというほど緊張感を取り戻し、改めて心から松の枝との一体化を試みる。



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