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episode.30 (ページ2/4)

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趣のある店の中へ、ネジたちの姿が吸い込まれていく。
私も彼らの姿を見失わないよう、豪華な庭園を囲む白壁の上を走って追いかけた。
ただし、自分の姿を見られてはマズイわけで、その点は充分に警戒し、庭に植えられた木の陰でうまくこの身を隠しながらの進行となる。
今も立派な松の木の、複雑にねじ曲がって伸びゆく、実にアーティスティックな形の枝の後方部分で、こちらも負けず劣らず体をくねらせ、身を添わせている状況だ。
正直、「何やってんだ、私?」みたいなことを思わないでもナイ。
普段の日常生活でこんなふうに腕やら首やらおかしな方向に伸ばして必死に木に寄りそう局面なんてまず出くわすことがないのだから、そう思ったところでなんら不自然なことではないはずだ。
しかし、仕方ないのだ。
この道を選んでしまったのはこの私自身なんだから。
日向分家で悶々と座布団抱えてうずくまるより、こうして不自然極まりない姿勢で一本松のくねる枝ぶりに身を添わせることを選んだのは私なんだ。

……いや、ちょっと、待て。
別に松の枝に隠れることは選んじゃいないから、私!!

そう、真の目的は、ネジのお見合いをこの目で見ること。
そうしたからといって、何がどうなるかなんて考えてはいないけど。
でも、自分の中に降り積もる変な焦燥感だけは、きっとどうにかできると思ってる。



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