Break for
episode.29 (ページ2/2)
そこでフミさんが何かに思い当たったかのように叫んだ。
「ネジぼっちゃまが何かお忘れ物でもされたのですか?!」
えッ?!
フミさんの突然の思いつきに、私のほうが面くらう。
でも、これを逃す手はあるまい。
私は上ずる声で懸命に口から出まかせを迸らせた。
「そ、そ、そう!! そうなんだよねーー!! ネジってばぁー、大事な大事なお財布忘れちゃってぇーー。アレないと、彼、ホント、おトイレにも行けないくらい意気消沈しちゃって、めっちゃネガティブ入るわけェ。もう、照らしても照らしても照らし出せない、生まれてきてごめんなさい的な、天岩戸が閉ざされたくらいの暗黒期到来だからね。で、まぁ、えーー、私、それ、届けてこようかと思って。ね」
私は勢いよくまくし立てると、玄関の忍靴を手をかけた。
「では、フミさん、わたくし行ってまいります!」
えらくもっともらしい声を出して、私は若干、足が入りきっていない靴を引きずりながらも立ち止まることなく、もちろん決して振りかえらずに、猛然と日向家の玄関を飛び出した。
to be continued.
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