Break for
episode.28 (ページ2/3)
大激怒してるネジから、私の真っ黒な料理を不機嫌に食べてるネジ、それと、あの夜、日頃のバリアを全て解除したような柔らかな表情を見せたネジまで。
そのいろんな顔したネジの記憶に、トクンと収縮した心臓が胸の奥でキュウッと痛くなる。
私は縫いかけの着物に手を伸ばした。
着物とは別の違う何かをつかもうとするかのように伸ばされた手は、私の視野にするりと入りこむと、脳裏に新たな記憶を呼び覚ます。
包帯に包まれた自分の手。
こんなふうに手当てしてくれたのは、そう、ネジだ。
あのとき、ちょっとでも私のことを心配してくれるネジがいた。
ちょっとでも私に笑いかけてくれるネジがいた。
ネジ……。
次の瞬間、私はガッと立ち上がっていた。
追いかけよう。
気になるんだ。
お見合いするネジのことが。
とってもとっても気になってしまう。
だから、やっぱり見に行こう。
このまま、ここにいて、モヤモヤした気持ちを抱えながらネジの帰りを待つよりも、実際にお見合いの様子を見に行ってしまえば、きっとずっとそのほうが楽に決まってる。
間違いない。
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