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episode.26 (ページ3/3)

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名無子……?

なんだってこんなときにアイツの顔が、と不服に感じながらも、心のどこかでちょっとばかり、アイツのせいだろうかと思う部分もあった。

アイツがいるから俺は見合いに行きたくないのか?

それは、見合話の破談のためにここまで協力してきたアイツに悪いからか。
それとも――。
俺はその先にある理由から目をそらすように、すぐさま心で頷いた。

そうだ、俺はきっとアイツの協力に対してすまないと思っているんだ。

そこに自分の気持ちを着地させ、俺はもう一度しっかりヒアシ様を見つめた。
先ほどからずっと、この凛とした日向家当主にしては珍しく、心苦しさに満ちた雰囲気をまとい続けている。
正直、ヒアシ様の事情が理解できない俺じゃない。
日向家を、それも本家を背負う立場として、ヒアシ様にはヒアシ様の顔がある。
木の葉名門と呼ばれる日向宗家にも、同様に名の知れた一族を相手にしたときの顔というものがある。
俺が行かなければ、その顔が潰れることになるんだろう。

俺が行きたくなくても、名無子に悪いとしても、俺にその顔は潰せない――。

分家のこんな俺に頭を下げんばかりに頼んでくるヒアシ様。
このヒアシ様を、父上は兄弟として守って死にたいと言っていた。
そんなことまで思い出されてきて、俺はクッと歯がみした。
ふっと目を伏せ、低い声で呟いた。

「わかりました。明日、お見合いに参ります」





to be continued.
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