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episode.25 (ページ4/4)

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「クジャク印の軟膏? うちじゃ置いてないねぇ」
「クジャク印かい? 市販品では聞かない銘柄だなぁ」

結界忍術班の忍と別れ、数軒の薬屋をまわったが、どの店の主人に聞いても返ってきた返事はどれもそんなものだった。
どうやら彼女に教えてもらったクジャク印の軟膏はどこにでも売っているメジャーな代物というわけではないらしい。
俺は少々困った心持ちで、本日足を踏み入れた何軒目かの薬屋からのれんをくぐり、外へ出た。

別に買って帰らなくてもいいんだが……。

さっきだって、買うのはやめだと思ったばかりだ。
それが、たまたまクジャク印の軟膏の話を聞き、さらにはそのことを教えてくれた女との話を打ち切るきっかけにもしたくて薬屋に入るはめになった。
ただ、それだけのことだ。
何軒かの薬屋をまわってしまったのも、自分の律義な性格ゆえのこと。
軟膏が手に入らなくても何ら問題はない。
我が家直伝の軟膏にしたって、すでにフミさんに作ってくれるよう頼んであるし、その部分にいたっても抜かりはなかった。
だから、買って帰る必要は本当にないのだ。

やめ、だ。

自分にもう一度そう言い聞かせた。
と、そのとき、俺の耳に軽い足音が飛び込んできた。
それは頭上から降ってくる。
俺がすっと視線を上げると、通りに面した店の屋根伝いにこちらへと走ってくる忍の姿が目に入った。
その忍は俺のいるすぐ近くの店の屋根から軽々飛び下り、俺の前に着地するなり、頭を垂れて膝まづいた。

「ネジさま、任務中、申し訳ございません」

何の用かと首を傾げ、見つめる俺に、男の忍は顔を伏せたまま告げてきた。

「ヒアシ様からのご伝言をお伝えしに参りました」





to be continued.
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