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episode.23 (ページ5/5)

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「大丈夫だって! アカギレとかそんなの、ほら、別にたいしたことじゃないし。無理はしてない、無理は」

ネジが包帯を巻く手を止めて、私の顔に視線を移した。
その瞳に私はなぜかドキドキしながら、言い訳でもするみたく、さらに言い募った。

「それに、契約……いや、恩返しだっけ? まぁ、どっちでもいいわ、とにかくそんなんだからさ、私も二週間は頑張るよ」

もう一度「大丈夫」と意味もなく頷いて、私はネジに向かって笑ってみせた。
心配してくれている、と思った。
ネジはやっぱり心配してくれてるんだと思えた。
ネジの理論的な物言いの端々から感じられる気遣い、それがどうしようもなく嬉しくて、私は笑うしかなかった。
そんな私をじっと見つめ、ネジは再び手元に目を落とすと、閉ざしていた口を開いた。

「わかった」

先ほどまで止めていた手を動かして、すぐに包帯を巻き終える。
そして、

「今日ぐらい、水仕事は控えろよ」

ネジがひどく不器用な誠実さを湛えたその瞳で私の目をしっかりととらえた。





日向家脱出という千載一遇のチャンスを、私はこのとき自らの手で潰してしまった。
あれほど出たがっていた日向の家、そこから出られる唯一の機会がようやく転がりこんできたというのに、私は完全にそれを棒に振り、そのくせ――後悔だけはしてなかったんだ。





to be continued.
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