Break for
episode.23 (ページ3/5)
「アカギレは治りにくいだろ。日向家直伝の軟膏はアカギレにもよく効くと聞いている。塗っておいたほうがいいと思ったんだ」
突き飛ばすように言い放って、ネジは堅く口元を引き結んだ。
その表情にふと思った。
もしかして、ネジ……。
私の手を心配してくれた……?
なんとなくそんなふうに感じて、
「……ありがとう」
私は小さくお礼を言ってみる。
でも、ネジは私の感謝の言葉をいつもみたいに鼻先でフンッとあしらうと、すぐさま手の傷の消毒を始めてしまった。
心配なんて……するわけないか。
ネジの態度にちょっとガッカリする自分が残される。
そのことに私はまたしても妙な違和感を覚えた。
なんだって私、ガッカリなんかしてんのよ……。
ネジが私を心配するわけないことくらい、ずっと前から知っていて、どう考えたって当たり前の、ごくごく自然な話なのに。
それなのに。
私は何を……期待してんのよ?
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