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episode.23 (ページ1/5)

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庭に面した廊下にふたりで座りこんでいる。
私の横でネジがどこかから持ってきた消毒薬と脱脂綿を手に口を開いた。

「ホラ、手を見せてみろ」
「……うん」

例の和室での破壊行為のあと、私たちは部屋を出たすぐ前の日当たりのよい廊下に移動していた。
ネジはもうちっとも怒った様子なんてなくて、いつもあれだけくどくど叱責されている私としては、なんとも不思議な感じがする。
決して悪くはない。
悪くはないのだけれど、もっと怒らなくていいのかな〜なんて変な心配が生まれるというか、そう、ちょうど、私のマズイ朝飯を食べ切って行かれたときに感じるあのおかしな違和感、ソワソワ感があるんだ。
フミさんもフミさんで、これだけ盛大な騒ぎを起こしたにも関わらず、やはり何を言ってくるわけでもなかった。
おそらく和室の前までは来ていたんだろう。
その姿を直接、目にはしていないが、ただ、部屋の障子戸に映るフミさんの静かに立ち去る影を、私は見た気がした。
廊下に降りそそぐ温かな日差しの中、私はネジに言われた通り、自分の血の滲んだ利き手をニョキッと突き出した。
ネジが早速、消毒薬を含ませた脱脂綿で拭こうとする。
でも、そこで動きがふっと止まった。

「お前、この手……」
「え?」

どうしたんだろうと思って差し出した手に目を向ける。
視界に映る自分の手を見て、私はネジの言おうとした言葉の意味を理解した。

「あぁ、コレ? アカギレだよ」



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