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第5話番外編 (ページ6/13)

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目に飛び込んできたのは私の心を慰めてくれるブツでは決してなく、ラップにくるまれた丼ぶりだ。
その横には一筆箋が添えられており、

『今晩のお夕飯は縁起をかついでカツ丼にしました。母』

「って、いるか、こんなんんんんんッーー!!」

発音の難しい「ん」をいくつも重ね、私は力いっぱい叫んだ。

なんで段ボールにカツ丼入れてきてんだ、アイツ?!
いや、好きだけど!!
カツ丼、確かに好きだけど!!
親心なのかもしんないけど、いらんわ、こんなんッ!!

私は一筆箋の紙を鷲掴みにしてグシャリと握りつぶした。

っつぅーか、っつぅーか、縁起かついでって何?!
玉の輿に乗れってことか?!
ちゃんと花嫁修業に打ち勝って玉の輿をゲットして来い、みたいな感じか?!
それを『勝つ丼』で縁起かついじゃってんのか、あの親ぁぁあーー!!

一筆箋をどけた下にはご丁寧にも割り箸まで用意されている。
私はそのいらん気遣いにさらなるイラ度を高めながら、割り箸を力任せに二つ折りにした。
横からはネジが暢気に箱を覗き込んでくる。

「ほぉー、カツ丼か。うまそうだな」

うまそうだな、じゃないーー!!

人の気も知らないで気楽な感想を述べるネジに血圧が300を越えた気がした。
私はネジにカツ丼の入った丼ぶりと半分に折れた割り箸を押しつける。



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