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episode.20 (ページ3/3)

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確かに聞いたことはある。
日向家分家が宗家のために全てを投げ出さなければならないという掟を。
たとえ、それが命であっても、この規律の前では意味をなさない宗家絶対主義の過酷な法。
そういうしきたりの下で、ネジがずっと苦しんできたことも、誤解だったとはいえ、ネジがお父さんの死をその因習の犠牲だと思っていた時期があったことも知ってる。
さらには、おそらく、今でもネジは、できることならこの戒律をなくせたらと形のない日向家の歴史や伝統と向きあい続けているであろうことも薄々わかってはいる。
いくら仲が悪くたって、さすがにそれくらいのこと、私も知らないわけじゃなかった。
私は自分の頭上に高々と掲げられた厳格な板をひたすらじっと見上げつづけた。
目の前に傲慢に存在する戒律板、そこにフッと昨日の温和で柔らかなネジの顔が思い浮かんだ。
あの柔和な表情を押し隠して、任務だって何だって、ネジは憔悴するほどに頑張っている。
戦いつづけてる。

ネジは、戦いつづけてるのに――。

私の上にのしかかるように飾られたこの板っきれが、ネジの上にも同じように、いや、それ以上の重圧感で覆いかぶさっているのかと思うと、なんだか無性に腹立たしくなってきた。

こんな板っきれがあるから、なおさら苦しむんだろ。

目に見えない日向家の束縛をこんなふうに具現化させて、それがどれだけネジの上に重くのしかかって彼を苦しませるのか、わからないとでも言うんだろうか。
もちろん、この板がなくなったって、日向家の戒律は変わりはしない。
今すぐ、なくなるわけでもない。

それでも――。

今の私にはどうしても、こうせずにはいられない気がして、足元の畳を蹴りつけた。
天井近くにまで飛び上がる。
私は眼前に位置するこの不愉快な木板に迷うことなく手を伸ばした。





to be continued.
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