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episode.20 (ページ2/3)

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……アレだよ、アレ。
私、ポスター貼った部屋だと着替えすんのも恥ずかしい内気で気弱なハニカミガールだから。
ムリムリムリ。
こんな部屋にずっといたらホント気ィ狂うから。
だって、もう、めっちゃ写真が見下ろしてきてるもんッ。
しかも、めっちゃ怖顔だからね、みんな!
ガン見だよ、全員、私のことガン見だよ、チクショウ!!

言いようのない居心地悪さに、私の緊張もめでたく臨界点突破を果たしたらしい。
体中の穴という穴から、気持ちの悪い汗がふつふつと沸き上がってくる。

ヤ、ヤヤ、ヤ、ヤ、ヤバイッて、マジで、もう!!

完全に青ざめはじめた私の視線が、新鮮な空気を求めるように額縁のない上空へと彷徨い仰ぐ。
ゆらゆら虚ろに揺れ動く私の目は、まさに死んだ魚と同類だ。
キレイに生気が失せている。
と、その虚ろさにかけては右に出るものもいないに違いない私の目に、不意に何かの文字の連なりが映し出された。

なんだ……?

写真以外の物が視界に入ったことで安心したのか、なんとか意識をつなぎとめ、私は自分の視覚が認識したそれに目を凝らしはじめる。
その文字群は、私の正面、床の間の真上にかけられたでっかい板っきれに書かれたものだった。
そこに黒々とした墨色でしたためられた文章。
いや、文章というよりも、箇条書きというほうが正しいか。
そのひとつひとつ簡潔にまとまった文字たちを、私の瞳は意味もなく辿りだした。

え、コレって……。

字に目を注いでいた私の喉が空気を飲んでゴクリと鳴った。
板に書かれてた文字の連なり、それはまさに、日向家宗家に対する分家の役割、立場、決まりごと、いわゆる戒律、と呼ばれるものの文字だった。
その真っ黒な墨字を見上げ、私は無意識のうちに息を止めていた。



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