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episode.14 (ページ1/3)

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パタン、と静かに閉まる玄関ドアの音を背中に受けて、俺は自分の部屋に足を踏み入れた。
左目にかかる額あてを外し、無造作にベッドの上に放り投げると、窓辺に飾ってあるいくつかの写真の中のひとつを手に取った。
窓の横で壁にもたれてそれを見つめる。
写真に映る今よりもずっと若い俺とヤマトと名無子の三人は暗部時代の俺たちの姿だ。
この写真を撮った後、俺は暗部を抜けた。
二人と離れるのはひどくつらかったが、上からの異動命令じゃ仕方ない。
アイツらと過ごした時間を止めるように、俺は二人と一緒に記念撮影をした。
すごく可愛い後輩だった。
ヤマトも、名無子も。
弟みたいなヤマトと妹みたいな名無子は俺にとってすごく大事な存在で、三人でいることが俺には何よりも楽しく感じてた。
今はもうあれから何年も経つ。
ここ数年はろくに会えやしなかったけど、ヤマトとはちょっと前からまた一緒に任務に就きだしていた。
ヤマトは驚くほど忍としての腕をあげ、その成長ぶりはすごかったけれど、それでもやっぱりアイツは相も変わらず弟のような存在で、きっと名無子もそうだろうってそんな風に思ってた。
なのに、久々に会った名無子は俺の想像してた姿とは違ってた。
俺がいつも助けてばかりいたあんなに頼りなかった妹分は俺の知らない間に当時と変わらぬひたむきさを残したまま、ひどく真っ直ぐな強さを湛えた一人の女性へと変化してた。
俺は写真の中で今にも泣き出しそうな顔をしている名無子をじっと見つめた。



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