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episode.29 (ページ1/1)

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なに言ってるの、カカシ先輩?!

丘の上から転げるように逃げ出し、林の中を駆け抜けながら、私の視界は徐々ににじんで歪みを生じ、その視野をせばめていった。

幸せにしてもらえって、なに?!
長生きしろって、なに?!
なんか、もう、そんな言葉……遺言みたいじゃない!!

走って酸欠にあえぐ胸がカカシ先輩に言われた台詞にさらにしめつけられて、苦しさを増していく。
ついに目から涙が溢れ、私は頬を伝ったそれを拳固で乱暴にぬぐった。
カカシ先輩はすでに死ぬ覚悟を決めている。
そうとしか思えなかった。
だからこそのあの言葉だ。
でも。

そんな気持ちで任務に行かないでよ――。

いつも強かったカカシ先輩。
私を助けてくれて、私をからかって、つかみどころのない顔を見せて、そして、いつだって優しい風のような笑顔で包み込んでくれたカカシ先輩。
いくつもの大好きなカカシ先輩の姿が私の体中をまるで赤血球と一緒に駆け廻るようにして流れていく。
その中で、

『もう、うんざりなんだよ、大事な人を失うのは――』

この間、私に見せたカカシ先輩のひどく心細い空気が胸によみがえって、私はガッと胸元を押さえた。

カカシ先輩――。

カカシ先輩はそれが嫌で、だから、もう今度は自分が死んでしまおうって、そう思っているんだろうか。
私はギリッと口唇を噛みしめる。

ねぇ、カカシ先輩、そんなの嫌だよ。
そんなの、私はやだから……。
だから……。

私はもう一度手の甲で涙をぬぐい、火影邸目指してひた走った。





to be continued.
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