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episode.28 (ページ1/3)

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風が吹き抜ける。
満開の桜の木から空へと花が舞い上がる。
緑色した丘の上でたった一本生えている桜の木は青空から降り注ぐ陽の光に吸い込まれるようにキレイにキレイに花びらを乱舞させていた。
その花びらは上空の光と戯れると今度は重力と絡み合い、この地上へと落ちてくる。
それを受けとめるかのように、サクラの木の根元で寝転がっている人物の姿が目に入った。
カカシ先輩だ。
草地にゴロンと寝そべり、立てた左ひざの上に右足を乗せて、組んだ両手は頭の下にしいている。
顔の上には愛読してやまないイチャ本が開かれたページを下にして乗せられていた。
寝ているのだろうか。
身動きひとつしないその姿に、私はオズオズと近づいた。
一足一足、草を踏みしめ進むたび、私の心音がどんどん高鳴っていく。
なんでこんなとこまで来ちゃったんだろう。
誰よりも会いたくて、でも今は誰よりも会うのが怖いカカシ先輩。
もう諦めなきゃいけなくて、それにこれ以上嫌われるのが恐ろしくて、今一番近づいたらいけないはずの存在。
本当は来たらいけなかったんだろうと思う。
だけど、どうしようもなかった。
サクラちゃんの言葉に、私は駆けだしてしまっていたんだ。



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