With
episode.18 (ページ1/3)
身じろぎすらできない。
カカシ先輩の腕が私を包み込み、私はその温かさに、鼻腔に届くその肌の香りに、呼吸さえ止まってしまった気がする。
「そんな真剣な顔で、俺に優しくするな」
私の耳元でカカシ先輩がひどくか細い声を出した。
「お前をどこにも行かせられなくなる……もう、うんざりなんだよ、大事な人を失うのは――」
カカシ先輩……。
『それはひどくつらいことだよ』
綱手様に言われた言葉が私の体を貫いていく。
カカシ先輩は仲間の屍が、大事な人たちの屍が、まわりに増え続けるそんなつらい現実を今までずっと見つめ続けてきたはずなんだ。
その中を前へ前へとたった一人で歩き続ける気持ちは一体どんなものだったんだろう。
そしてカカシ先輩のことだ、きっとなんで仲間を助けられなかったのかと腐るほど自分を責めてきたに違いない。
それを、この人は。
今までそんな思いを微塵も見せず、私の前であんなに優しく、いつだって何の心配もないって顔で笑ってくれていたのか――。
私はカカシ先輩のいつもより細く感じる体に自分の腕をまわした。
「私は……私は生き続けます。カカシ先輩に失う痛みなんか絶対感じさせない……だから」
カカシ先輩のベストをグッと握りしめる。
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