With
episode.17 (ページ5/6)
私はカカシ先輩のあの一言のためにずっと頑張ってきたんだよ――。
「私……」
せりあがる思いに押されるように、私の口から言葉がこぼれ落ちた。
「私、カカシ先輩の言った言葉が支えだったんです……」
「俺の、言葉?」
「はい。暗部の頃、カカシ先輩が言ったんです、自分より強い女性が好きだって……。だから、あの……私も強い女性になりたくて……その、ここまで頑張ってこれたんです」
今まで誰にも言ったことのない話に自分の胸がドキドキと大きな唸りをあげている。
その横でカカシ先輩は穏やかな空気を纏って真面目に私の声を聞いてくれた。
私は先輩の作りだす居心地のいい空気の中で、大きく上下する胸を押さえつけながら一生けんめい言葉を繋いでいく。
「でも、あの頃は先輩の言葉の意味をちっともわかってなかった。なんでカカシ先輩がそんなふうに言うのかなんて全然気付けなかった。だけど、やっと最近ちょっとだけわかってきた気がします」
そこまで言うと、私は瞬間的に伏せた目を再びあげて、意を決したように先輩の顔を見た。
「強い人なら誰にも倒されない。そしたら失わないで済むんです。カカシ先輩は大事な人を失いたくないから、だから、ああいうふうに言ったんですよね?」
真剣に見つめる私の視線をしばらくじっと受け止めて、それから先輩はふっと困ったような表情で笑った。
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