With
episode.11 (ページ4/4)
自信なさげに答えた僕に、
「何、気弱なこと言ってんの。もっと自信持ちなさいよ、ったく」
カカシ先輩は右目を細めて、いつも通りの笑顔を浮かべた。
僕はその笑顔に少しだけ苦しくなる。
そんなふうに笑うアナタを、僕の好きな彼女は必死に追いかけていて。
それを知ってる僕は自信を持とうにも、アナタに勝てる気なんて、
これっぽっちも起こらないんだ―――。
僕の情けない顔を見ていた先輩が、あ、そうだ、と何かを思いついたように口を開いた。
「ヤマト、この時計、買うの待った」
「は? 何ですか、急に」
「お前がめでたく名無子とつきあうことになったら、俺がお祝いにこの腕時計買ってやる。だから、それまで我慢しとけ。な?」
名案とばかりにカカシ先輩が僕を見る。
僕は思わず苦笑をもらした。
「わかりました。じゃあ、僕の思いが成就したら買ってください。あ、でも、その時はコレじゃなくて、こっちの……」
「ばか、そんな文字盤にダイヤ嵌ってんのダメに決まってんでしょ?! いくらすると思ってんの、それ?!」
「アハハ、やっぱダメですか? そうですよね、これ、ゼロの多さが違いますもんね、値段の」
ニシシシシと笑う僕をカカシ先輩は、
「当たり前だ。お前に買ってやるのは最初に見てたこのシルバーのやつ。これ以上高いのはダーメ!!」
あきれた顔で見つめると、まったく、もう、って言いながら、この人らしい実に柔らかな笑顔を見せた。
to be continued.
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