With
episode.05 (ページ4/5)
カカシ先輩……。
私の胸にブワッと大きな安心感が広がった。
いつだってカカシ先輩は、何を考えているのかよくわからなくて、それなのに、私の情けない姿には必ず気づいて、こんな風に優しく包み込んでしまう。
風、みたいな人だな。
つかみどころがなくて、春の野を吹く風のようにやわらかい。
そんなカカシ先輩に、私の胸がトクントクンと暖かな音を立てる。
カカシ先輩―――。
やけに膨らむ胸の中で小さく呟くと、私はカカシ先輩から眼下の敵へと視線を戻し、自分の意識を切り替えた。
背負っていた刀を引き抜き、握った柄に力を込める。
落下していく体とともに、
今はまず、この敵を仕留める!
刀の刃を下向きに、体の正面にかまえると、私はその刀を敵の体に突き立てた。
絶命した敵から刀を引き抜き、刀身の血を払っていると、そばにカカシ先輩がやってきた。
背中に刀を納め、すぐにお礼を言う。
「ありがとうございました、カカシ先輩」
ペコリと頭を下げた私を面越しに見つめ、カカシ先輩が真面目な声で答えて返す。
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