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episode.42 (ページ4/4)

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少しだけ間を空けて、綱手様がゆっくりと口を開いた。

「同じ眼をしていたから、かな」

どこか遠くを見つめるような眼で綱手様は呟いた。
それはまるで任務に出ていった二人のまなざしを思いだしてでもいるみたいに見えた。

「アイツも……名無子も、カカシと同じ眼をして私に言ったんだ。カカシの任務に一緒に行かせて欲しいってな」

同じ、眼――。

揺るぎない意志を秘めた瞳。
名無子もそんな眼をして、火影様に迫ったんだろうか。
視線の先で、ふっと綱手様が眼をあげて、僕のことをまっすぐ見つめた。

「お前はどうなんだ? 私には何か迷っているみたいに見えるが。違うか、ヤマト?」

自分の胸中を、本心を、しっかり読まれてしまった気がしてドキッとする。

迷い……。

そう、僕は迷っている。
二人を助けに行かなければと思う反面、僕は名無子にもカカシ先輩にも顔を合わせる勇気がないんだ。
あの二人が互いに思いあってることなんて、もう充分わかってた。
でも、その両想いの二人を、僕は祝福して温かく見守れるほど立派な人間じゃナイ。
二人の幸せな姿を受け止めきれず、直視できやしないだろう。
そんな半端な僕が二人の任務に向かったところで、なんの役にも立ちはしない。
それどころか、その前に、綱手様に止められるだろう。
揺らぐ気持ちで行けば、二人の足手まといにしかならないと。

「僕は……」

心を見透かすような眼で、僕の顔を見つめる綱手様に、

「……失礼します」

そのまま何も言えず、踵を返した。
負け犬の僕には、ただそうするしか出来なかった。





to be continued.

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