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episode.42 (ページ3/4)
僕は言いようのない苛立ちを覚えて、まるで綱手様に当たるような口調で問い詰めた。
「でも、なぜ!! 綱手様はなぜそれを許可したんです?! それじゃあ、みすみす死にに行かせるようなもんじゃないですか!!」
「そうだな。死にに行かせるようなもんだな……」
「だったらッ……」
「止められなかったんだよ」
「え?」
止められなかった?
綱手様の言ってる意味をつかみ損ねて黙り込むと、その沈黙の中で、綱手様はすっと目を伏せた。
「覚悟が違ったんだ。何かをもう決めてしまったような、今さら誰かが何を言っても変えられないような、そんな覚悟を決めた眼をしてたんだよ、カカシは」
覚悟……。
僕の脳裏にカカシ先輩のまなざしがよみがえる。
いつも穏やかで、何を考えてるのか見せてくれないその瞳は、時として、あの人の持つ頑固さを湛え、一度決めた意志の強さを露わにすることがある。
そんな眼をして、カカシ先輩は綱手様の前に立っていたんだろうか。
僕には何がカカシ先輩をそこまでさせたのか全くわからない。
でも、それなら。
僕は目の前で苦しげに眼を伏せる綱手様に小さく訊ねた。
「じゃあ……なぜ、名無子まで?」
カカシ先輩について行かせたんですか?
一人で行こうとしている先輩に名無子は邪魔なだけに思える。
それに名無子を任務に行かせなければ、彼女だけでも死なせずに済むだろう。
だったら、行かせないほうがいいんじゃないのか。
嫉妬からなのか、きちんとした理屈からなのか、よくわからないまま、心の中でそんなことを思った。
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