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episode.41 (ページ5/5)
しかし、カカシ先輩は顔色ひとつ変えず、体の力をまったく抜かない。
頑ななまでに容赦ないカカシ先輩の攻撃に、雪牙も鋭い声をあげた。
ギリリと研ぎ澄まされた右目で先輩を睨みつけ、私に向かって命令する。
「名無子!! 何をしている!! 早く口寄せの術を解け!!」
その声にハッとして、私は急いで術を解く。
ボンッと盛大な音と煙が撒きあがり、雪牙の姿が消え失せた。
カ……カカシ先輩……。
私が不安げな視線を送る先で、カカシ先輩が静かに立ち上がり、ゆっくりとこちらを振り向いた。
自分よりもずっと背の高いカカシ先輩を戸惑いがちに見上げ、私は小さな声で呟いた。
「カカシ先輩?」
上からはカカシ先輩のひどく優しい視線が降りてくる。
そのまなざしにクッと胸が苦しくなってうつむくと、先輩が私の右頬に左手をそっと伸ばした。
「あんなオスネコに触らせるなよ」
「先輩……」
もう一度見上げた私の視線を受け止めて、カカシ先輩は私の頬を親指の付け根でぬぐう。
「もう、お前に触れていいのは、俺だけだろう?」
口元の布をずらした先輩が、私の頬の傷口にやわらかく口づけた。
to be continued.
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