With
episode.41 (ページ3/5)
「仕留めてやったぞ、名無子」
声のしたほうを向けば、真っ白な巨体を揺らす雪牙がいた。
口元だけ真っ赤なのは、おそらく襲いかかった敵の血で汚れたためだろう。
「ありがとう。助かった」
口のまわりの鮮血を赤くざらついた舌で舐めながら、雪牙が目を細めて私を見る。
「礼なんかより、早くお前を食らわせてもらいたいもんだな、名無子」
私の肩と腕に前肢がかかる。
雪牙は先ほどクナイで傷ついた私の頬の傷を、そこから出る血を味わうかのように、ベロリと血なまぐさい大きな舌で舐めあげた。
その瞬間、
ガッ!!
何かがぶつかりあう音が響き、私の体からフッと重圧が消えた。
目の前には、地面にたたきつけられた雪牙の姿。
え……? と思う私の視界に、さらにカカシ先輩の姿が映りこむ。
雪牙の体を右膝で踏みつけ、押えこみ、首元をぎゅっと右腕で絞めあげている。
その横顔がひどく無表情で、滅多に見られないカカシ先輩の怜悧な空気にひどく怖くなった。
「カ、カカシ先輩……」
私の呼びかけを無視して、先輩は雪牙に低く呟く。
「あんまり馴れ馴れしいマネするなよ、雪牙」
グルルルル……と、雪牙が不機嫌に喉を鳴らした。
潰れていない右目をギリッと光らせ、先輩を射抜く。
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