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episode.37 (ページ7/7)

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「俺が臆病だったばっかりにお前をさんざん傷つけてきたな。すまない」

軽く横に首を振る私の瞳をのぞきこんだまま、先輩は視線をそらすことなく言葉をつないだ。

「俺はずっとお前がヤマト一緒になるのが一番いいと考えていた。いや、今は、考えようとしていた、と言ったほうが正しい。だから、俺を追いかけるお前を突き放しもした。ふたりの前から逃げようともした。だが、お前には……勝てなかった。いつだって俺の心は揺れ動いて、結局、自分の想いはごまかしきれなかった。それどころか、お前は俺に、お前を守れず失う怖ささえも越えさせたんだ。もう、俺にその気持ちを止めろと言っても無理だ」

カカシ先輩はそこでいったん話を止めた。
そして、舞い落ちる沈黙の中、私に一言告げた。

「愛してる、名無子」
「――――」

息を飲んで見つめ返す私の視線に、カカシ先輩のそれが今まで見せたことのない真剣さで強く絡みつく。
その有無を言わさぬ力強さは先輩の男という部分をストレートに突きつけ、私を圧倒した。
でも、怖くはなかった。
逆にこんなふうに熱く求められることに、私の胸は満たされていく一方だ。
もう一度、カカシ先輩が私に口づけた。
熱すぎて溶けてしまいそうな感触が、今度はすぐに離れていく。
どこか互いに名残惜しむ空気を払いのけるように、先輩は私から視線をはずし、茂みの向こう側へと目を向けた。
殺気を込めて身構える。

「行くぞ」
「ハイ」

私の返事を確認するなり、カカシ先輩は茂みから飛び出していった。
その背中を、私もすぐに追いかけた。





to be continued.
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