With
episode.37 (ページ3/7)
私の胸がグッと締めつけられる。
先輩が相変わらず風みたいに優しい笑顔で話をつづけた。
「さ、わかったら一秒でも早くこの場を……」
「行きません」
「名無子」
断固として否定する私を先輩が困ったように見つめた。
「わがまま言うんじゃないの。お前もこの情報を急いで綱手様に届けなきゃいけないことくらいわかってるでしょ? それに俺のことなら本当に心配いらない。すぐお前に追いついてみせるから。ね?」
先輩の大きくてあったかな手がいつものように私の頭にふわりと置かれる。
それでも、私は頑としてうなずかなかった。
「巻物なら先輩の口寄せで忍犬にお願いもできます。でなければ私が口寄せして雪牙(セツガ)を呼びます」
「雪牙? お前、まだあんなヤツを使役してるのか?」
顔を曇らせた先輩の問いには答えず、言葉を継いだ。
「先輩は……先輩は私を逃がしたら、そのまま死んでもいいって、そう思ってるんでしょう? だって、カカシ先輩、この任務を一人で請け負ったとき、すでに死ぬ覚悟を決めてるようにしか見えなかったもの! でも…私、そんなの嫌です……! 私は先輩と一緒にいるッ……!!」
スルリと、私の頭からカカシ先輩の手が落ちるように頬を滑りゆく。
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