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episode.36 (ページ3/4)

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俺は持っていた枯れ枝を手折り、火にくべた。
炎の中からパチッと枝の爆ぜる音がして、加えたばかりのそれにも簡単に火が燃えうつる。
その乾いた音も燃え上がる炎の色も、まるで自分の名無子に対する想いを表しているようで、俺の胸はひどく苦しくなった。

名無子……。

気を許すとお前を抱きしめそうになる。
手を伸ばして、その肌に触れて、アイツの瞳も唇も頭の中も、すべて俺でいっぱいにしたくなる。
自分の気持ちなんか、もうとっくにわかってる。
笑ってごまかしたって、お前と久しぶりに再会したあの日、俺は本気で、

キレイになったなって、そう思ったよ――。

『サザンカさー』
『ハイ?』
『ちょっとキレイになったんじゃない?』
『へっ?!』
『ん、違った。俺の勘違い』
『また、もぉ、からかう!!』

いつも俺の後を追いかけていた妹みたいなお前が、火影邸の前で、あのとき一瞬でも初めて俺の目にひとりの女性として映った。
そのあとだって、

『私は生き続けます』

そう言って見せたお前の、昔と変わらぬひたむきな、そして昔とは比べものにならぬほどの強さに、俺の感情は進んでいくばかりだった。

名無子が好きだってそんな気持ち、もうとっくにわかってる。

でも、俺は名無子の前で兄役でも先輩でもない一人の男になるのが怖かった。
それは俺に裏切りと恐怖心の二つを突きつける。
ずっとアイツを思ってきたヤマトに対する裏切りと、このさき忍として名無子が急に死んでしまうかもしれないという恐怖心。
その二つが俺の体を、心を拘束する。



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