With
episode.35 (ページ3/5)
その考えを肯定するのは簡単だった。
だって、それはそうだろう。
私は無理やり先輩についてきただけだし、それ以前に、私は先輩にとって充分ジャマ者でしかない存在なんだ。
だったら、ここで私を置いていったって何の不思議もないじゃないか。
私は手にしていた肉を放りだし、慌てて立ちあがった。
黒くひずむ森の中へと迷うことなく入っていく。
「先輩? カカシ先輩?!」
ただでさえ空には雲が多く、地上に差し込む光が限られているというのに、足を踏み入れた森の中は木々でいっそう外界の光が遮断され、闇の濃度がことさら深い。
肌にまとわりつく闇夜とやけに寒々とした冷気。
しんと静まりかえるわりには獲物を狙う生臭い殺気がそこかしこに溢れている。
そんな黒々とした夜の森で、私は先輩の名前を呼びながらその姿を探してまわった。
「カカシせんぱーーい!!」
何度呼んでも返事はかえってこなくて、全然見つからない先輩に思わず泣けてきそうになる。
いつもは怖くなどならない闇が、まるで自分を飲み込んでいくようで不意に身震いがした。
先輩がそばから消えたことで、あたりの空気が一気に薄まり、変な孤独感に襲われる。
カカシ先輩がこの世から消えてしまったら、大事な人が突然消えてしまったら、そのときもやっぱりこんな気持ちになるんだろうか。
カカシ先輩は……こんな思いを何度も繰り返してきたんだろうか。
せり上がるいろんな想いに、私はもう一度叫ばずにはいられなかった。
「カカシ先輩ッ!!!」
私の必死な叫びが森の中で反響する。
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