With
episode.35 (ページ2/5)
その暗い空を見つめ、ここまでの道のりを思い返してみる。
夜明け前の里の大門で、任務に向かうカカシ先輩をつかまえた。
自分の後を追いかけ、ついてくる私を嫌がり、先輩は里に追い返そうとした。
それでも私は必死にくいさがり、最後はそんな私の頑なさに根負けするように、そして、ヤマトの謎の伝言にも何か思うところがあったのだろう、カカシ先輩は勝手にしろと丸投げしたんだ。
迷惑がっているだろう。
無理やりついてきてしまったんだから。
でも、ひとりでなんか行かせられなかった。
命を落とすかもしれない高ランク任務に、命を落とす覚悟を決めた先輩を、ひとりでなんか行かせたくなかった。
絶対に、先輩が死ぬなんて、イヤ――。
だから、どんなことをしても一緒に行こうと思ったんだ。
一緒に行って、私がカカシ先輩を死なせない。
たとえ、どれだけ嫌われても、迷惑に思われても。
もっとも、もう充分、私は先輩に嫌われてしまってるはずだけど……。
そのことに、私の胸はズキリと正直な痛みを訴えた。
それにしても、先輩、どこまで行っちゃったんだろう?
まわりに林立する黒い木々をくるりと見わたす。
トイレだと思って待ちだしたのはいいけれど、なかなか戻らぬカカシ先輩に不安を覚えた。
ずいぶん、ここから離れた場所まで行ってるのだろうか。
カカシ先輩のことだから、もちろん帰り道に迷っているなんてことは考えられないし、いい加減、戻ってきてくれてもいいと思う。
心細さに揺れる瞳でカカシ先輩の姿を飲み込んだ森を見つめたとき、私は心の中で、あっと声をあげた。
もしかして、私……置いていかれた?
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