With
episode.35 (ページ1/5)
「ほんとにそれでわかるの、カカシ先輩は?」
まったく意味のわからないヤマトの伝言に首を傾げると、
「わかるよ。絶対。大丈夫」
ヤマトは自信に満ちた返事とは裏腹にひどく寂しげな優しい笑顔を見せた。
時計って……。
一体なんの話なんだろう。
私はカカシ先輩と焚火をはさみ、ヤマトが別れ際に言った伝言について考えていた。
カカシ先輩にヤマトの言葉を伝えたとき、いつも顔色を変えない先輩が珍しく息を飲み、何か思い当たる節がある様子だった。
おそらく二人はちゃんと意味が通じあっている。
それがなんなのか、私には皆目見当がつかず、気になって仕方なかった。
夕飯にと焼いたウサギの肉は私の手に握られたまま、徐々に冷え始めている。
すっかり湯気の消えた肉の向こうで、視野にわずかにかかっていた焚火の火がゆらりと揺れた。
ハッと目を上げると向かいに座っていたカカシ先輩が立ちあがったところだった。
「先輩?」
どうしたんだろうと思って声をかけると、カカシ先輩は、
「すぐに戻る」
それだけ告げて、ゆっくりと森の中へ姿を消した。
トイレ……かな?
なんて思いながら、大人しく見送り、私は何気なく視線を空へ向けた。
木々の隙間から見上げた空には黒い雲がたなびき、星々の光をいたるところで覆い隠してしまっている。
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